主婦・主夫の交通事故

ここでは、主婦・主夫の方が交通事故に遭われたときに注意すべき点について解説します。

 

1 休業損害

(1)基本的な考え方

主婦・主夫の方が交通事故に遭われて、家事ができなかった場合、何らかの補償はなされるのでしょうか。

家事を行なうことによって収入があるわけではありません。収入が減っていない以上、休業損害は発生しないという考え方にもなりそうです。

しかし、賠償上はそのような結論にはなりません。怪我のため家事を休まざるをえなかった場合には、主婦・主夫の休業損害を請求することが可能です。家事も他の仕事と同様に経済的な価値が認められる活動であると評価できるからです。

具体的には次のようにして、女性の平均的な賃金を参考に計算をすることになります。

例)令和元年1月1日に、夫と同居している専業主婦の方が事故に遭って1ヶ月間入院し、その間、家事ができなかった場合

  【計算式】

   ①388万0100円(賃金センサス令和元年・全女性・学歴計の平均賃金)÷365日≒1万0630円(日額)

   ②1万0630円×30日(1ヶ月)=31万8900円

①で家事の日額を算定し、そのうえで、②で休業期間に対応する金額(休業損害)を算定するという計算式になります。よく主婦・主夫の場合は「日額5700円」とか「日額6100円」といわれることがありますが、これはあくまで自賠責保険の基準です。本来賠償されるべき休業損害の日額は、上記金額(休業をした年度にもよります)が基本となります。

(2)いわゆる兼業主婦・主夫の場合

では、家事をしながらパートをしている場合はどうでしょうか。いわゆる兼業主婦・主夫の問題です。パートを休んだ期間に対応する収入の減少分について補償がされるのみとも考えられそうです。

この点については、実務上、原則として、専業主婦・主夫の事案と同様の計算方法で休業損害を算定することになります。兼業か専業かで、同じ家事をしているにもかかわらず差があることは不当であるからです。ただし、兼業をしている方が平均賃金以上の収入を得ている場合は例外です。現実の収入のほうが高ければ、そちらの収入を基礎として休業損害を算定したほうが高額になる場合があるからです。

(3)その他の問題点

その他に、実務上は、特にむち打ち損傷の事案などで、何日分の休業を認めるか、何割程度の就労制限を認めるか等が問題となるケースは多くあります。他にも被害者が高齢である場合には年齢別の平均賃金(高齢者のほうが平均賃金は低くなる傾向にあります)を採用すべきか等が問題となることがあります。

最終的には、個別・具体的なケースに応じて、総合的に判断をしていくことになります。詳しいことは、まずは専門家に相談されることをお勧めします。

 

2 逸失利益

逸失利益は、後遺障害によって将来生じる収入の減少分を補填する趣旨の損害項目になります。そのため、現実の収入がない主婦・主夫の方に逸失利益は生じるのかという疑問もありそうです。

しかし、主婦・主夫の方であっても、休業損害における基本的な考え方と同様に、逸失利益の請求は可能です。この場合も、女性の平均賃金を基礎として、基礎収入を算定することになります。そのうえで、他の有職労働者の方と同様の計算式に基づいて、逸失利益を請求していくことになります。

 

3 弁護士費用特約

主婦・主夫の方が交通事故被害に遭われた場合、上述のとおり、休業損害ないし逸失利益の請求が可能ですから、不当に減額されることがないように、裁判基準に基づいた請求をしていく必要があります。

請求にあたっては、弁護士に依頼されることをお勧めします。その際に必要となる弁護士費用については、ご自身が弁護士費用特約に加入していなくとも、配偶者または同居の親族が加入していれば、弁護士費用特約の適用対象となるケースが一般的です。

ご家族の自動車保険をしっかりとご確認いただくことが大切です。

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