歩行中に交通事故に遭った場合の対応と注意点について弁護士が解説
歩行中に交通事故の被害に遭うと、自動車同士の事故に比べて、歩行者は重症化しやすい傾向にあります。
全国的な傾向としても、死亡事故が発生するケースとしては、状態別では歩行中の事故が最も高いとされています。山口県においても、死亡事故は約3分の1が歩行中の方です(令和元年10月1日時点の統計)。
特に、高齢者の方が被害に遭われるケースが多いとされています。
このような状況ですから、反射板を着用する等して、少しでも事故発生を事前に防止できるように対策しておくことが望まれます。
以下では、歩行中に交通事故に遭った場合の対応と注意点について解説します。
事故直後の対応
電話ができる状況であれば、まずは警察へ通報をすることになります。警察に通報をしなければ事故証明書は発行されません。軽微な事故であると安易に判断して、内々に示談をしたり、警察への連絡を避けたりするようなことは避けましょう。
その後、できる範囲で、当事者の連絡先の確認、事故状況の確認(ドライブレコーダーの有無等)、保険会社への連絡等を実施します。
病院での治療
接触事故が発生したときは、まずは病院へ受診することをお勧めします。重傷を負ったときも、歩行者対自動車の事故であれば、大半のケースでは自動車側の過失が多くなるため、相手方の保険会社が治療費の支払を対応してくれることが通常です。
歩行者の事故の場合は、骨折等の重傷を負う可能性が高く、骨盤骨折、脊髄損傷、頭部損傷等で、生命に危機が及ぶこともありますので、何よりも速やかに病院で適切な治療を受けることが重要になります。
また、頭部外傷が認められ、かつ事故後に意識障害が認められるケースでは、一見回復したように見えても、実は認知機能が低下している等(いわゆる高次脳機能障害)の後遺障害が残存している可能性もありますので、医師とも相談をしながら周囲のご家族のサポートのもと慎重に経過を見守る必要があります。
保険の確認
歩行中に事故に遭った場合、ご自身や同居の親族が加入されている自動車保険を活用することで、より安心して治療に専念できる環境を作れることがあります。
具体的には、仮に相手方の自動車保険が何らかの理由で利用できなかった場合でも、ご自身や同居の親族が加入されている自動車保険の人身傷害補償特約(現在は基本契約として付保されているのが一般的です)から、治療費や休業補償等を受けることができる場合があります。
また、歩行者に過失があるときでも、この人身傷害補償特約が適用される場合には、過失相殺で相手方に対する請求から控除される部分を、補填してくれる役割が期待できます。
なお、自動車事故の場合に健康保険は使えないと誤った運用をしている医療機関もまれに存在しますが、健康保険を利用することは問題なく可能です。特にご自身に過失が見込まれるとき等は健康保険の活用を積極的に検討すべきです。
さらに、ご自身や同居の親族が加入されている自動車保険に弁護士費用特約が付いているときは、(大半のケースでは)弁護士費用の自己負担なしに、相手方に対する損害賠償請求について、依頼を受けた弁護士がすべて代理で対応してくれます。そのため、ご本人としては煩わしい手続等から解放され、治療に専念をすることができます。
示談交渉、訴訟
治療が完了すると後遺障害が残っている事案では後遺障害の認定手続きを受けることになります。後遺障害の等級認定結果が出た後に(死亡事故の場合には相続人が確定した後に)、相手方に請求する損害金額が明らかになりますので、裁判基準(弁護士基準)に基づく請求をして交渉をし、交渉で解決しないときは訴訟提起をして最終的な解決を図ることになります。
上記で述べたように、歩行中の事故は重大事故になりやすく、何よりも治療に専念できる環境を作ることが重要になります。歩行中の事故で、重傷を負ったため治療に専念できる環境を作りたいとき、事故態様や過失割合が問題になっているとき、後遺障害の内容に納得ができないとき等は、ご自身や同居親族の保険を確認したうえで、早期に弁護士へ相談されることをお勧めします。