弁護士費用特約について
1 弁護士費用特約とは?
弁護士費用特約とは,自動車保険の特約の一つで,交通事故の被害者が加害者に対して損害賠償請求をする際に要した弁護士費用等について,一定の限度で保険金が支払われるという特約です。
あえて定義するとすれば,「賠償義務者に対する損害賠償請求に伴い被保険者が負担した弁護士費用等及び法律相談料について,限度額の範囲内で,保険金が支払われる特約」と言えます。 |
弁護士費用特約は以前に比べ相当普及しており,特に意識しないうちに加入していたというケースもよくありますので,任意保険に加入されている方はしっかりと特約の有無を確認しておく必要があります。
2 どのようなときに弁護士費用特約を利用できるのか?
弁護士費用特約はどのようなケースで利用できるのでしょうか。これは,被保険者(事故に遭った場合に補償の対象になる人)の範囲に関することです。たまに,「私の保険証書を確認しましたが,弁護士費用特約には入っていなかったので,弁護士費用特約は使えないようです…」という話をお聞きしますが,実際には親族の弁護士費用特約を利用できるということもありますので,確認が必要です。
代表的な約款をもとに,以下のケースで解説してみたいと思います。
【ケース】Aさん(50歳・男性)が保険契約者の場合
Aさんは,妻であるBさん,次女のEさん(18歳・未婚),及びAさんの母であるFさんと同居中。そして,Aさんの長男Cさん(20歳・未婚)は,県外にある大学に通うため,Bさんの父であるGさん宅で生活しています。Aさんの長女Dさん(22歳・既婚)は,嫁いでいるため,既に別居しています。
(1)記名被保険者(日常的に契約車両を運転している人。通常は保険契約者)
まず,記名被保険者であるAさんが交通事故に遭った場合,当然,Aさんの弁護士費用特約を利用することができます。
(2)記名被保険者の配偶者
保険約款上は,記名被保険者の配偶者も,弁護士費用特約を利用することができます。
したがって,Aさんの妻Bさんが交通事故に遭ってしまった場合も,Aさんの弁護士費用特約を利用することができます。
なお,配偶者には,内縁関係も含まれます。
(3)(1)(2)の同居の親族
記名被保険者及び記名被保険者の配偶者の同居の親族も被保険者に含まれます。
上のケースですと,Aさんの次女であるEさん,Aさんの母であるFさんは,Aさんと同居している親族なので,Eさん,Fさんが事故に遭った場合も,Aさんの弁護士費用特約が利用できるということになります。
他方で,Gさんはどうでしょうか。残念ながら,Gさんは対象外です。なぜなら,Gさんは,Aさんの親族ではありますが,Aさんと同居していないからです。
(4)(1)(2)の別居の未婚の子
記名被保険者及び記名被保険者の配偶者の別居の未婚の子も被保険者に含まれます。別居の親族については,未婚の子のみが被保険者となります。
上のケースですと,Aさんの長男であるCさんが,別居の未婚の子にあたります。
他方で,Aさんの長女であるDさんは対象外です。Dさんは,別居の親族ですが,既婚であるため,「未婚の子」には該当しないからです。
3 どのような費用について弁護士費用特約から保険金が払われるか?
弁護士費用特約に加入しているとしても,どのような支出であれば,保険金が支払われるのでしょうか。一般的な保険会社の約款を確認すると,「被害事故による賠償義務者に対する法律上の損害賠償請求に伴い被保険者が負担した弁護士費用等および法律相談料とします。」との記載がされています。
少し分かりにくい表現ですが,要するに,「弁護士費用等」と「法律相談料」について,保険金が支払われるということになります。
(1)「弁護士費用等」の範囲
弁護士費用等には,概ね以下のような費用が含まれます。
ア 着手金,報酬金
弁護士に依頼した場合の弁護士報酬(最初に支払いをする着手金も含まれます。)です。
イ 訴訟費用等(印紙代,郵券代等)
若干分かりにくいかもしれませんが,相手方との交渉が決裂し,訴訟提起に至った場合,裁判所に審理を仰ぐわけですから,裁判所に収める手数料等が必要になってきます。その手数料等も「弁護士費用等」に含まれます。事案によっては,手数料等だけで,10万円以上になることもありますので,非常に重要なことです。
ウ その他
その他にも,損害賠償請求をするにあたり,常識的に判断して,通常必要になってくる費用については保険金が支払われます。例えば,事故現場を見ないことには過失割合に関する見通しをたてにくい場合に,弁護士が遠方の事故現場へ赴いた際の交通費等が代表的なものでしょうか。
(2)「法律相談料」の範囲
法律相談料とは,弁護士に法律相談をした場合に要する費用です。一般用語的には,「弁護士費用等」に含まれそうですが,約款上は,別の扱いになっています。
一般的には,30分/5000円の相談料がかかる法律事務所が多いと思います。この相談料も弁護士費用特約によりカバーされる範囲になります。
4 弁護士費用特約でいくらまで支払われるか?
弁護士費用特約が利用できるとして,保険金が支払われる限度はいくらなのでしょうか。弁護士費用特約は,基本的には,弁護士と依頼者(被保険者)が委任契約により定めた弁護士報酬に相当する金額について,保険金が支払われるということになります。しかし,委任契約の内容次第で,無制限に保険金が支払われるというわけではありません。
限度額の定めとしてよくあるケースは,弁護士費用等は300万円,法律相談料は10万円までというものです。
もちろん,枠があるといっても,支払われるのは常識の範囲内です。例えば,簡易かつ軽微な事案なのに,着手金として100万円を支払う旨の委任契約を弁護士と依頼者が締結しても,事案に即した通常の弁護士費用の相場どおりの保険金しか支払われません。
なお,法律相談料については,弁護士費用特約で対応していないという保険会社もありますので,事前に保険会社に確認しておくことが重要です。
5 よくある質問
以下,よくある質問について回答します。回答内容はあくまで代表的な保険の契約内容を前提にしています。契約内容によっては異なるケースもありますので,詳細はご相談時にご確認ください。
(1)弁護士は誰でもよいか?
弁護士費用特約を利用される場合,依頼できる弁護士に制限がある(例えば,保険会社の指定弁護士でないとダメなど)とお考えの方がいらっしゃいますが,そのようなことはありません。様々な弁護士に相談し,最も信頼できると思う弁護士に依頼することをおすすめします。
(2)弁護士費用特約を利用すると保険料が上がるか?
弁護士費用特約を利用しても,保険の等級に影響はありません。したがって,来年度以降,保険料が上がるということもありません。
(3)契約車両利用時以外の交通事故でも弁護士費用特約は利用できるか?
弁護士費用特約の契約車両以外の車両等を利用しているときでも,被保険者(※上記2参照)の被害事故であれば,弁護士費用特約を利用することができます。例えば,親族の車両や原付を運転中の事故でもカバーされますし,歩行中に自動車にはねられたという場合も利用することができます。
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