過失割合が控訴審で有利に逆転した事案
被害者の属性 | 40代男性 |
事故の分類 | 追突 |
傷病名 |
頚椎捻挫 |
依頼のきっかけ
駐車場内の通路を依頼者が走行していると、相手の車が交差する通路の右側から右折で割り込んで進入してきました。相手の車に追従して進行しようとしたところ、相手の車は突然に(ハザードランプも点灯させずに)停車し、すぐに右後方にある駐車区画にむけて後退を始めました。依頼者の車は急停車しましたが、すでに相手の車の直後まで接近をしていたため、後退を続けた相手の車が逆突し事故が発生しました。
依頼者は、保険会社や最初に相談をした弁護士から、「結果的には駐車を妨害したことになるので、依頼者の方が過失は大きくなる」と説明を受けました。
しかし、依頼者としては、駐車の合図はなかったし、そもそも結果的に相手の車の直後まで接近してしまったのはこちらが意図したものではなく、相手の車が自車の直前に割り込んで入ってきたからで、全体としてみればこちらの過失が大きいというのは納得ができませんでした。
そこで、セカンドオピニオンとしてラグーンに来所されました。
交渉・訴訟の経緯
交渉の段階では、相手方は、別冊判例タイムズ38(賠償実務で過失割合を判断する際に参考とされる書籍)の事故類型図によれば、基本の過失割合は依頼者80:相手20になるとの方針でした。
そのため、速やかに訴訟提起をすることになりました。
訴訟では、別冊判例タイムズ38の事故類型図は本件で参考にはならないこと、当方の過失の方が少ないはずであることを重点的に主張しました。
しかし、一審の裁判所の心証は、あくまで別冊判例タイムズ38の事故類型図をベースに、相手の著しい過失を理由に少し修正した結果、当方65:相手35という割合でした。当方としては、和解案に応じる合理性はないと判断し、和解は決裂となりました。予想どおり、その後の判決でも過失割合については同様の判断がなされました。
この結論は不当であると思い、控訴をすることになりました。
控訴の後に、一審の判決の誤りを指摘した書面を提出し、これに対する相手の反論書面の提出があった状態で、控訴審の第1回期日を迎えることになりました。
控訴審では、一審の判決には疑義がある、本件では別冊判例タイムズ38の事故類型図によるべきではない、過失は相手の方が大きい、との心証が開示されました。これは、一審の判決を当方有利に逆転させるという内容でした。
その後に和解協議を続け、最終的には当方40:相手60という割合であれば当方としても和解に応じることはできるとの結論になりましたので、その内容で和解となりました。
弁護士の目
実務では、別冊判例タイムズ38の事故類型図にあてはめて過失割合を判断するのが通常です。確かに、多くの事案では、この事故類型図をもとに、過失割合を判断していくことが公平です。しかし、事案によっては、機械的にこの事故類型図にあてはめることが不当な結論を導くこともあります。
また、多くの事案では、裁判所の和解案に応じることで解決します。しかし、裁判所が常に適切な和解案を出すとはかぎりません。時には、裁判所の和解案に応じないほうが良い、ということもあります。この判断は非常に難しいところです。
本件では、一審の裁判所の和解案に応じず、控訴審の判断に委ねたことが依頼者にとって望ましい結果となりました。
- 過失割合が控訴審で有利に逆転した事案
- 加害者無保険でも人身傷害保険によって裁判基準満額の回収をした事案
- 令和3年12月28日(火)~令和4年1月4日(火)年末年始休業に関するお知らせ
- 山口県で交通事故の多い交差点ランキング
- 事故後の難聴を伴う耳鳴について12級相当の認定がなされた事案
- 異議申立によりCRPSで7級の認定を受けた後,裁判で解決した事案
- 【後遺障害12級13号】後遺障害逸失利益について就労が可能とされる67歳までの22年間の逸失利益を獲得した事例②
- 裁判でアルバイトの休業損害が認められ和解となった事例
- 早期治療費打ち切り後,被害者請求で支払った治療費を回収した事例
- 男性の家事従事者としての休業損害を請求し,その後示談した事例