裁判外の交渉で、事故による減収がなくとも逸失利益と慰謝料が裁判基準の満額で認定された事案
被害者の属性 | 50代男性 |
事故の分類 | 歩行中に車と衝突 |
傷病名 |
脛骨骨折 |
依頼のきっかけ
事故後に保険会社とやり取りをしていたところ、仕事が忙しく、やり取り自体を煩わしく感じたこと、今後、賠償の話し合いの段階になればより一層ストレスになると感じたことから、弁護士に依頼することを決断しました。
交渉・訴訟の経緯
治療は1年以上の長期間に及びました。症状固定となって、骨折部に痛みが残ったことから、後遺障害の認定手続を取ったところ、14級9号の認定がなされました。
認定内容をもとに、相手方保険会社に請求をしたところ、保険会社からは、依頼者に事故後の減収がない(給料が減っていない)ことを理由に、逸失利益を否定する内容の回答がありました。
当方からは、事故後に減収がないのは依頼者自身による格別の努力の結果であって、仕事に影響が出ていないわけではないことを説明し、再度、逸失利益の支払を求めました。
その後、相手方も弁護士に依頼をしたため、以後は弁護士同士の交渉となりましたが、結論として、逸失利益を満額(労働能力喪失率は5%で、喪失期間は5年間)、慰謝料も裁判基準の満額での回答が得られたため、裁判外で示談となりました。
弁護士の目
逸失利益は、事故がなければ得られていた利益を内容とします。言い換えると事故によって失われた利益であり、多くは収入の減少として具体化されます。そのため、事情があって事故後に減収が生じていない場合、加害者側としては、逸失利益は生じていないから支払はしないと主張をしてくることがあります。
この点、逸失利益の性質について、色々と議論があるところですが、実務上は、減収が生じていない=逸失利益はないと即断するのではなく、あくまで個別の事情を総合考慮して、今後、逸失利益が生じる蓋然性があると判断されるときは、多くの裁判例において逸失利益が認定されています。
形式的な議論をするのではなく、現在減収が生じていない事情に踏み込んで検討し、将来の利益喪失の見込みがあれば、そのことを丁寧に説明し交渉に臨むことが重要となります。
- 裁判外の交渉で、事故による減収がなくとも逸失利益と慰謝料が裁判基準の満額で認定された事案
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