脳損傷と生活支援

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 交通事故によって脳に損傷を負った場合,損傷の部位や程度によっては,自立した社会生活を送るうえで必要な判断能力が低下してしまうケースや,ひどい場合には本人の判断能力が全くなくなるというケースもあります。

 このような場合,事故に遭われた本人はもちろん,家族の方々にも大きな支障が生じます。 

 生活が変わってしまうことによる困惑,将来の介護に対する不安,うまくコミュニケーションが取れないことによるストレス…。

 日常生活の些細なことにまで支障は生じ,事故前に比べ,本人や家族の生活は一変してしまいます。 

 

 では,事故により判断能力が低下してしまったり,判断能力が全くなくなってしまったという場合,本人や家族が少しでも安心して生活をするためには,どのような支援が必要になるのでしょうか。

 

 ラグーンでは,本人や家族に対する生活支援についても,積極的に情報提供や手続の支援を行なっています。ここでは,支援制度の概要をご説明したいと思います。

 

1 日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)

 脳損傷等により,判断能力が事故前に比べ不十分になってしまった場合,社会福祉協議会の日常生活自立支援事業を利用できる場合があります。

 日常生活自立支援事業は,被害者本人が,社会福祉協議会と協議のうえ,必要な支援を決定し,福祉サービス(デイサービス,就労支援等)の利用手続のサポート,日常的金銭管理サービス(医療費等の支払い,公共料金の支払い等),生活支援員の定期訪問等の支援を受ける契約です。

 契約ですから,判断能力がある程度なければ利用はできません。判断能力がなくなってしまったという方は後述の成年後見制度の利用を検討しなければなりません。

 

2 成年後見制度

  脳損傷等により,判断能力が不十分になった場合や全くなくなった場合,成年後見制度の利用を検討する必要があります。

  成年後見制度は,判断能力が不十分な方(判断能力が全くなくなった場合も含みます。)の財産に関する法律行為(預貯金の管理,賃貸借契約の締結,遺産分割等)や生活・療養看護に関する法律行為(介護契約,施設利用契約等)について,裁判所によって選任された後見人等が本人の代わりに行なったり(代理権),本人が無断で行なった行為を取り消す(取消権)ことで,本人の生活を支援する制度です。  

  日常生活自立支援事業と利用対象者が重なる場合もありますが,裁判所を利用した制度であるため,基本的には,本人に対する支援の内容は,日常生活自立支援事業よりも法的な色彩が強くなります。

  成年後見制度は,支援を必要とする本人の判断能力の程度によって,以下のように利用できる制度が異なってきます。本人の判断能力の程度に応じて,後見,保佐,補助の制度を柔軟に活用することが本人の生活支援にとって重要です。

 

判断能力の程度

利用できる制度

全くない(欠けている)

後  見

著しく不十分である

保  佐

不十分である

補  助

 

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