加害者が任意保険未加入の死亡事故について、被害者加入の任意保険から裁判基準による支払いを受けた事案
被害者の属性 | 70代 女性 |
事故の分類 | 歩行者 |
傷病名 | 頚髄損傷 |
依頼のきっかけ
事故によってお亡くなりになった被害者のご遺族からの相談でした。
加害車両(バイク)が保険に未加入であったため、今後の補償はどのようになるのか不安な思いからご相談に来られました。
解決までの経緯
被害者の方が加入していた自動車保険の約款を確認すると「人身傷害補償保険」に加入されていることがわかりました。人身傷害補償保険は、保険会社によって名称が多少異なりますが、怪我をした方側の保険で、治療費や慰謝料等を支払ってくれる保険です。相手が無保険、自分側に大きな過失があるなどといった相手方側から十分な補償がなされない可能性がある事案で有効活用されている便利な保険です。
人身傷害補償保険は、約款上は分かりにくいですが、裁判手続をとったか否かによって、支払がされる保険金額が異なります。
通常は、あらかじめ決定されている保険会社の基準に基づき機械的に支払保険金の算定がなされます。算定された保険金額について、基本的には交渉の余地がありません。この点が、慰謝料等の金額について交渉の余地がある、加害者側の保険と決定的に異なります。
しかし、約款をよく読むと、多くの人身傷害補償条項には裁判手続時の「読み替え規定」が存在します。具体的には、「賠償義務者がいる場合に、裁判で約款の本来の基準とは異なる基準(※つまり裁判基準)で損害が算定されたときは、その基準にしたがって保険金の金額を算定する」という規定です。つまり、裁判をすれば、低い保険基準ではなく、裁判基準による支払いがなされることとなります。
本件でも、被害者側が最大の保険金額を受領するために、加害者を相手に訴訟提起をし、裁判所に損害額を認定してもらい(裁判基準)、その基準を人身傷害保険会社に提示することで、加入していた人身傷害保険会社から、裁判基準による支払いを受けることができました。
その結果、裁判をしない場合と比べて(読み替え規定の適用がない事案と比べて)1000万以上増額した保険金を受け取ることができました。
弁護士の目
交通事故で有効活用できる保険は、加害者側の保険だけとは限りません。
被害者側が加入している保険を有効活用することで、加害者側が任意保険に未加入であっても、加入しているときと同水準の補償を受けることができます。
そのためには、上述のような人身傷害補償保険の活用が必要になります。読み替え規定を理解したうえで適切なプロセスを経て補償の話を進めなければなりません。そうしないと本来受け取ることができた保険金を受領する機会を逃してしまうリスクがあります。
交通事故の問題は、賠償や医学について詳しいだけでは不十分で、保険実務や約款についても詳しい知識やノウハウが必要になるのです。
加害者側が保険に未加入であったとしても、他に取り得る選択肢はないか、アドバイスをさせていただくことは可能ですので、お困りの方は気軽にご相談ください。