14級9号を獲得した被害者の正座をしたい希望を優先し治療費を保険会社の打切りより長期で認めさせた事案
概要
単車で走行中に,加害車両と接触し,膝打撲等の傷害を負った被害者について,残存した膝の痛みに関し後遺障害等級認定サポートにより14級9号の認定を受け,訴訟により適正な賠償が認められた事案
被害者の属性 | 30代 男性 会社員 |
事故の分類 | 単車で直進中に,左前方から交差点に進入してきた車両と衝突 |
負傷部位 | 左膝 |
傷病名 | 膝打撲,膝窩部挫創 |
自覚症状 | 左膝痛 |
後遺障害等級 | 14級9号 |
賠償金額 | 520万円 |
依頼のきっかけ
依頼者は,過失割合について保険会社ともめており,今後の交渉について少しでも有利に進めたいと考え,ラグーンへ来所されました。
また,事故後,左膝の痛みにより,正座をすることができなかったため,後遺障害が残存する可能性があり,そうであれば適切な後遺障害等級の認定を受けたいという思いから,ラグーンへ依頼することになりました。
後遺障害等級認定までのサポート
依頼者としては,正座ができるようになるまで,治療を継続したいという思いを強く持たれていました。
そこで,ラグーンでは,まずは治療の継続をお勧めしました。問題は,保険会社が,依頼者の納得のいく時期まで治療継続を認めてくれるかという点でした。
依頼者は,事故後,半年程度の段階でラグーンへ来所されました。他覚的所見が乏しく自覚症状が主体の事案では,事故後半年あるいは早ければ1カ月程度で,保険会社から,治療費打ち切りの話がなされます。
本件でも,受任後早い段階で,保険会社から症状固定に関する問い合わせがありましたが,正座という日常動作ができるようになるまで通院したいという依頼者の考えや改善効果が認められていることを伝え,治療の必要性・相当性が認められることを前提に,依頼者の治療継続をサポート致しました。
結果的に,依頼者は,正座ができるようになるまで症状が改善し,その時期をもって,症状固定となりました。
そして,ラグーンでは,症状固定のタイミングで,主治医と面談をし,主治医に対し,依頼者の自覚症状について正確に後遺障害診断書に記載していただくことを依頼するとともに,他覚的な所見についても記載をお願いしました。
今回のケースでは,依頼者の左膝の裏(膝窩部)に手術痕が残ったことから,手術痕についても後遺障害診断書に記載していただくように,主治医に依頼をしました。依頼者の手術痕については,長さ,幅ともにそれほど大きなものではなく,自賠責保険で認定される醜状痕には該当しないことが予想されました。しかし,ラグーンでは,醜状痕の存在が左膝の痛みを推測させる所見の一つとも考えることができましたし,依頼者の症状を適切に伝えるべきとの方針から,あえて醜状痕についても後遺障害診断書に記載する方向性で進めることにしました。
被害者請求の結果,残念ながら醜状痕については後遺障害に該当しない旨の判断となりましたが,左膝の痛みについて,14級9号の認定がなされました。
交渉の経緯
14級9号を前提に,保険会社との交渉を開始しました。
しかし,保険会社の提案は,総額で約250万円であり,全く適正な賠償額の提示はなされませんでした。
そこで,依頼者と打ち合わせのうえ,交渉を打ち切り,訴訟提起をする方針に決めました。
訴訟提起をしたところ,加害者側は,様々な反論をしてきました。争点は,①正座ができるようになるまで治療を継続したことについて,治療の必要性・相当性は認められるのか,②事故後に収入が増えている場合に,逸失利益は認められるのか,③①と関連して,入通院慰謝料はいくらと算定すべきか,④自賠責の後遺障害に該当しない醜状痕について,後遺障害慰謝料算定にあたって考慮すべきか,⑤依頼者の過失は何割かというところで,多岐にわたりました。
診療録,刑事記録等の資料を精査し,当方の主張を出し尽くしたところで,裁判所から和解案が示され,最終的には,和解により本件は解決しました。①,②,③については当方の主張が認められましたが,残念ながら,④については認められず,⑤については双方にとって中間的な過失割合という内容で和解に至りました。
和解結果(細かい損害項目は省略)
治療費 | 100万 |
傷害慰謝料 | 170万 |
後遺障害慰謝料 | 110万 |
後遺障害逸失利益 | 140万 |
合計 |
約520万 当初の保険会社提示額との差額 270万円 |
弁護士の目
交通事故被害者にとって,症状固定時期をどのように考えるのかは非常に難しい問題です。戦略的に,早めに症状固定と判断し,被害者請求をすることも考えられるところですが,多くの被害者は,治療により症状が完治・改善することを望んでいます。症状固定後,原則として,自腹で通院をしなければなりませんから,安易に症状固定時期を早めることには問題があり,専門的な判断に基づき慎重に検討する必要性があります。
本件でも,正座ができるようになりたいという被害者の想いを最優先し,また,治療による改善効果も認められていましたので,治療の継続という選択肢をとりました。治療期間がのびたことにより,訴訟では治療の必要性・相当性が争点になりましたが,結論的には,当方の主張が認められましたので,大きな支障はありませんでした。
また,自賠責保険の認定上の後遺障害には該当しない後遺症状が残った場合,この点を損害算定にあたってどのように考慮するのかは非常に難しい問題です。被害者代理人としても,傷害慰謝料の増額事由として,あるいは後遺障害慰謝料(の増額事由)として考慮してもらいたいところです。この点については,本件では,消極的な判断となりましたが,損害の主張・立証責任は被害者側にありますので,少なくとも最初からあきらめるのではなく,積極的に主張をして少しでも被害回復を図りたいところです。
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