加害者が赤信号を意図的に無視していることを理由に慰謝料の増額が認められた事案
概要
被害者の属性 | 30代 男性 会社員 |
事故の分類 |
バイクと乗用車(乗用車は赤信号無視) |
負傷部位 | 腰,手 |
傷病名 | 腰椎横突起骨折,橈骨骨折 |
後遺障害等級 | 14級9号 |
賠償金額 | 415万円(既払金含む) |
依頼のきっかけ
加害者が任意保険に加入していなかったため,どのようにすれば被害回復を図ることができるのか,また,事故態様が悪質である場合でも通常の慰謝料しか払われないのか,不安に感じたことから,ラグーンへ依頼されることになりました。
交渉の経緯
加害者は本件事故について刑事処分を受けており,刑務所に服役をしていたため,ご依頼をお受けした段階ではどこにいるのか所在が分かりませんでした。症状固定日から時間が経過していましたので,時効で依頼者の権利が消滅しないように,早急に所在を調査して,訴訟提起をすることになりました。
また,依頼者は,幸いにも無保険車傷害保険に加入をしていました。無保険車傷害保険とは,加害者側が対人賠償責任保険に加入していない等の理由で,十分な賠償を受け取ることができない場合に,被害者側が加入している任意保険から,不足する賠償金相当額について保険金が支払われるという特約です。そのため,ラグーンでは,無保険車傷害保険の活用も検討し,依頼者の任意保険会社との交渉についても併行して進めていくことにしました。
本件は,加害者が赤信号を意図的に無視して交差点へ侵入したという極めて悪質な交通事故の事案でした。このような悪質な交通事故に巻き込まれた被害者の方にとって,精神的苦痛の程度が甚大であることは明らかです。そこで,裁判では,通常の裁判基準からさらに慰謝料の増額が認められるべきであるという点を重点的に主張しました。
その結果,判決では,通常の裁判基準によりも2割程度増額した慰謝料が認定されました。
判決をもとに,被害者側の任意保険会社とも粘り強く交渉をしたところ,無保険車傷害保険からも,保険金として,判決で認定された金額どおりの支払いがされることになりました。
弁護士の目
加害者の事故後の言動や加害者側の保険会社の担当者の言動等が交通事故被害者をさらに傷つけ,二次被害,三次被害ともいえるような状況に陥るケースがあります。このような場合,慰謝料の増額事由があるとして,通常の裁判基準といわれる基準から増額して慰謝料の請求をするケースがあります。しかし,私が経験した限りでは,慰謝料の増額事由が認定されることは簡単なことではありません。被害者側が増額事由の存在を,証拠をもって,立証しなければならないからです。通常は,加害者の言動や保険会社の言動を逐一録音しているわけではありませんので,あとで言った言わないの水掛け論になり,最終的には立証が不十分として,増額事由は認定されないことになるのです。
今回のケースでは,上記のような事故後の言動を増額事由として主張しているのではなく,事故状況が極めて悪質であるということを増額事由として主張しました。裁判例では,意図的な信号無視の他,飲酒運転,薬物等の影響で正常な運転ができない状態での運転,無免許運転,ひき逃げ等の事情がある場合に,増額が認められることがあります。これらの事情は,警察の捜査の過程で明らかになることが多く,その場合,刑事記録を証拠として提出をすれば,先ほどの言った言わないの水掛け論になる事例に比べて,比較的立証が容易になります。今回も,取寄せた刑事記録をもとに,立証を行いました。
また,本件では,被害者の方が無保険車傷害保険に加入していたことも被害回復に重要な役割を果たしました。近時は保険会社によって人身傷害保険に一本化されていたりするケースもありますので約款の確認が必要ですが,人身傷害保険が基本的には約款に基づき形式的に算定された保険金が支払われるのに対して,無保険車傷害保険は加害者に対して請求できる「損害」相当額が保険金として支払われます。そのため,今回のケースのように,無保険車傷害保険を活用することにより,裁判基準を前提として,さらに増額事由がある場合でも,加害者側から損害賠償責任を果たしてもらったのと同様の効果を得ることができることになります。
いつ,どのような状況で交通事故に遭遇するのか全く想定できない以上,もしもの時に備えて,ご自身の加入されている任意保険の保障内容を再確認されてみてはいかがでしょうか。
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