症状固定時に左足甲部痛を残す被害者について,後遺障害等級認定サポートにより,14級9号が認定された事案
概要
被害者の属性 | 30代 女性 会社員 |
事故の分類 |
歩行中,自動車のタイヤに左足甲部を轢かれる |
負傷部位 | 左足甲部 |
傷病名 | 左母趾末節骨骨折,左足甲部痛等 |
後遺障害等級 | 14級9号 |
賠償金額 | 280万円(既払金含む) |
依頼のきっかけ
歩行中に左足甲部を自動車のタイヤに轢かれ,左足甲部に疼痛が残存することから,適切な後遺障害等級認定をしてもらいたいとの思いで,来所されました。
ご相談時,既に症状固定をしており,後遺障害診断書も取得していただいている状況でした。
後遺障害等級認定までのサポート
受傷態様・受傷部位からして,左足指の機能障害(可動域制限)が残存する可能性がありました。しかし,依頼者に確認したところ,幸いにも機能障害は残存していないとのことでしたので,主に,左足甲部の疼痛について,適切な後遺障害の認定がされることを求めて,サポートを開始しました。
本件ではすでに後遺障害診断書を取得していましたので,医療照会(主治医に対して,後遺障害診断書のみでは明らかではない症状等について,書面等で質問をして,回答してもらう方法)により,追加の資料を取得する方針で進めることになりました。
被害者請求の結果,左足甲部の疼痛について,「局部に神経症状を残すもの」として後遺障害等級14級9号の認定を受けることができました。
交渉の経緯
相手方の保険会社と交渉をしたところ,後遺障害慰謝料及び後遺障害逸失利益については比較的早期に裁判基準による解決で合意することができました。
しかし,入通院慰謝料(傷害慰謝料)について,双方の見解が食い違う状況になりました。具体的には,当方が「赤い本別表Ⅰ」の基準で主張したのに対して,相手方保険会社から「赤い本別表Ⅱ」の基準によるべきとの主張がなされました。「赤い本別表Ⅰ」に比べて「赤い本別表Ⅱ」のほうが概ね2割~3割程度,慰謝料の金額が低くなります。赤い本によれば,「むち打ち症で他覚症状がない場合は別表Ⅱを使用する」とされています。
本件では,むち打ち損傷と同様に,疼痛ということで,神経症状が事故による症状の内容ですが,いわゆるむち打ち症ではありません。そのため,当方としては,「赤い本別表Ⅱ」を用いることが不当であることを主張しました。
交渉の結果,最終的には赤い本別表Ⅰを基準とすることで合意に至りました。
弁護士の目
ご依頼時,すでに後遺障害診断書が作成されている場合,主治医と面談をして後遺障害診断書の追記等をお願いするケースもあります。しかし,事案によっては追記等が困難な事案もあります。この場合,後遺障害診断書とは別に,医療照会等により,後遺障害診断書や経過の診断書ないし診療報酬明細書のみでは必ずしも明らかではない被害者の症状について,主治医に協力をお願いして,別に書面を作成していただくことがあります。
本件で作成された医療照会書(及び回答書)がどの程度後遺障害の等級認定において考慮されたのかは分かりませんが,少なくとも依頼者の症状を正確に伝え,依頼者にとって納得のいく判断材料を提出したうえで,自賠責保険の判断を仰ぐことができた点は一定の成果があったものと思います。
また,今回でも争点となった「赤い本別表Ⅰ」と「赤い本別表Ⅱ」の使いわけについては,非常に難しい問題であると思います。特に,むち打ち損傷による疼痛について14級9号が認定されるようなケースで争いとなります。しかし,現段階では,詳細に分析した資料がないように思われます。
個人的には,おそらく別表Ⅱが作成された経緯として,むち打ち損傷の,他覚的な症状の有無に関わらず通院が長期化するケースが存在するという特性が考慮されたものと思われますので,そのような特性とは無関係の事案では積極的に別表Ⅰによる解決を提案するべきであると思います。
- 裁判外の交渉で、事故による減収がなくとも逸失利益と慰謝料が裁判基準の満額で認定された事案
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