早期の医師面談により主治医の協力のもと後遺障害等級認定手続きを実施できた事案
概要
早期の医師面談により主治医の協力のもと後遺障害等級認定手続きを実施できた事案
被害者の属性 | 60代 男性 会社員 |
事故の分類 | 単車で交差点を直進中,右方から進行してきた車と衝突 |
負傷部位 | 手 |
傷病名 | 橈骨遠位端骨折 |
後遺障害等級 | なし |
賠償金額 | 260万円 |
依頼のきっかけ
事故に遭い,そのことを知人に相談したところ,知人からラグーンを紹介され,ご相談に来られました。
過失割合について争いがあり,かつ事故態様や負傷状況からして後遺障害が残存する可能性もあったため,治療に専念したいという一心で,ご依頼をいただくことになった事案です。
後遺障害等級認定までのサポート
依頼者は,事故前,仕事の関係でバイクの運転をされていました。しかし,事故後,握力が低下したため,バイクの運転ができなくなりました。そのため,仕事も休業しなければならない状態でした。
そこで,まずは治療に専念していただくことを優先しました。
治療期間が半年以上であったため,途中で,相手方の任意保険会社から,休業損害の支払いを打ち切る趣旨の連絡がありました。しかし,治療が不十分な段階で職場復帰をして,さらに負傷部位を痛めてしまうと,症状が悪化する可能性もあります。ラグーンでは,職業柄,休業が必要であることを任意保険会社に説明し,休業損害の支払いを打ち切られるという事態を何とか避けることができました。
次に,医師面談を実施しました。
目的は,依頼者の症状の正確な把握と,後遺障害診断の作成依頼でした。本件では,疼痛は少なくなっていましたので,手関節,手指の可動域制限の有無がポイントになりました。
関節の可動域制限については,自賠責保険会社が後遺障害の等級認定をするうえで必要な計測方法を用いて,健常な数値と異常が認められる数値を正確に測定する必要があります。
まれに,主治医の先生が作成された後遺障害診断書を確認すると,正確な測定方法を用いていないと考えざるをえないような記載がなされていることもあります。
そのため,事前に主治医の先生にご協力をお願いし,ときには参考資料を宇添付する等して,正確に測定していただくように説明をしておく必要があります。
本件では,弁護士が直接病院に赴いて,主治医の先生と面談をしました。そのうえで,依頼者の状況のヒアリングと可動域制限の測定について説明をし,後遺障害診断書の作成をお願いしました。
面談先の病院が下関であったからこそ,早期に医師面談を実施でき,後遺障害等級認定の趣旨をご説明することで,主治医のご協力を求めることができた事案でした。
医師面談から数日後,主治医から連絡があり,後遺障害診断書を受領することができました。そこには,1度単位で計測された詳細な測定結果が記載されており,納得のいく内容が記されていました。
他方で,測定結果に基づくと,可動域制限については,自賠責の後遺障害には該当しないこと可能性があることが分かりました。依頼者としては,治療により改善されたとはいえ,手関節や指の動きに違和感をもっていたことから,複雑な心境であったそうです。
しかし,最終的には納得をしていただき,残存する疼痛部分も含めて,後遺障害が残存しないか確認のために,念のため被害者請求をすることになりました。
被害者請求の結果,残念ながら,可動域制限,疼痛ともに,非該当との判断がなされました。依頼者に対しては,異議申立等で争うことも可能であることを説明しましたが,事前に見通しについてある程度の説明をしていたこともあり,非該当という結果を受け入れ,交渉に入ることになりました。
交渉の経緯
保険会社の交渉においては,過失割合,通院慰謝料の金額が争点になりました。
特に,本件では,上述のとおり,休業損害の支払い期間が長引いていたため,既払い金が多くなっていたという事情がありました。
そのため,保険会社としても他の損害項目を調整してトータルの支払金額を少なくしたいという意向があったのか,過失割合や通院慰謝料を裁判基準よりも低く算定した和解案を提示してきました。
ラグーンでは,通院慰謝料は裁判基準であるべきこと,自賠責の後遺障害とは評価されなかったものの,依頼者は仕事をするうえで少なからず支障を感じていることなどの事情を説明し,最終的には裁判基準で解決することになりました。
弁護士の目
今回は,後遺障害について,非該当という結果になってしまったことから,異議申立も視野に入れていた事案でした。
しかし,想定とは異なり,依頼者は異議申立をしないという決断でした。理由をお聞きすると,主治医の協力もあったし,被害者請求にあたって陳述書も添付していたので,自分の症状は伝えることができ,そのうえでの判断であるので納得はしているとのことでした。
交通事故の案件を扱っていて一番悩ましい問題は,自賠責の後遺障害には該当しないものの,被害者が症状を訴えているという事案をどのように対応するかという問題です。
場合によっては,複数回にわたり異議申し立てをして,紛争処理機構に申請をして,それでも納得ができずに裁判をするというケースもあります。
しかし,これでは被害感情が増幅されるだけで,被害者の求める解決には至らないことが多くあります。
被害者が納得をするためには,自分の症状を主治医や代理人が正確に理解し,主治医が記載した後遺障害診断書が自賠責保険会社にきちんと評価され,その自賠責保険会社の判断を尊重して任意保険会社と交渉ができるというプロセスが重要になります。このいずれかが欠けてしまうと,適正な解決は望めません。
本件では,地元のメリットを活かし,弁護士が医師面談を早期に実施し,主治医の協力を得れたことが納得のいく解決に至ったポイントであったと思います。