治療費の支払いを拒否された被害者が訴訟提起により判決で賠償を受けることができた事案

 

概要

 

被害者の属性 70代 女性 無職
事故の分類

タクシー乗車中の事故

負傷部位 足指
傷病名 中足骨骨折
後遺障害等級 なし
賠償金額 約200万

依頼のきっかけ

 依頼者は,タクシーの後部座席に乗車する際,左足が車内に完全に入っていないにもかかわらず,運転手が漫然と後部座席のドアを閉めたため,ドアに足の甲部を挟まれ,中足骨を骨折するという傷害を負いました。

 依頼者はすぐにタクシーの運転手に抗議をしました。しかし,タクシー会社は,足を挟んでしまった事実は認めたものの,中足骨の骨折は事故と無関係であると主張をして,治療費の支払いを一切拒否しました。

 依頼者は,タクシー会社の不誠実な対応に憤りを感じましたが,法的な解決に委ねるべきであると考え,ラグーンに依頼されることを決断されました。

 

交渉の経緯

 ラグーンでは,まずは速やかに主治医との面談を実施しました。主治医の見解は,骨折線を確認したところ,比較的新しいものであること,依頼者が訴える事故態様と甲部の負傷状況が一致することから,事故との因果関係は認められるというものでした。

 主治医の見解をもとに直ちに保険会社との交渉を始めましたが,保険会社は医学的な根拠を示すことなく,治療費等の支払いを拒絶しました。

 そこで,ラグーンでは,やむなく自賠責保険会社に対して仮渡金の請求を行うことにしました。仮渡金の請求は,通常の被害者請求(治療費,慰謝料,休業損害等)とは異なり,緊急で金銭が必要な被害者に対して概ね2週間程度で一時金の支払いがされるという制度です。本件では,治療に専念をしなければいけない状況であるにもかかわらず,治療費が支払われず,かつ,依頼者も経済的に余裕があるわけではなかったため,再優先で仮渡金の請求をすることになりました。

 仮渡金請求の結果,40万円の仮渡金が支払われ,当面の治療費,生活費を確保することができました。

 その後,保険会社と交渉をしましたが,保険会社は一貫してタクシー会社の責任を否定したことから,自賠責保険会社に対して,本請求(治療費,慰謝料,休業損害等)を行い,自賠責保険の支払いでは不足する部分について,タクシーの運転手及びタクシー会社を被告として訴訟提起を行いました。

 訴訟提起後,加害者は,被害者の主張する事故態様は信用できないものであること,仮に因果関係があるとしても被害者に素因があること等を主張して,責任を否定する主張に終始しました。

 期日を重ね,裁判所から,事故との因果関係を認め,かつ素因減額を認めない内容の和解案が提示されましたが,加害者側はこれを拒否したことから,証拠調べ手続を経て,最終的に,判決に至りました。

 判決では,和解案とほぼ同様な認定がされ,事故との因果関係が認定され(依頼者が主張する事故態様が認定され),かつ素因減額も認めないという判断がなされました。これに,弁護士費用や遅延損害金も認定されました。

 

弁護士の目

 保険会社は,事故と負傷の因果関係について疑問があるケースでは治療費等の支払いを拒否することがあります。実際に事故で怪我をしている被害者からすれば,事故で怪我をしたにもかかわらず,治療費を負担しなければならず,このような対応に到底納得することはできません。経済的に余裕がなければ,治療が必要であるにもかかわらず,治療を受けることすらできなくなります。

 このような場合に,加害者側の任意保険会社と医学的な資料をもって交渉することも重要ですが,一度支払い拒否の判断が示されたケースでは,通常は交渉によっても任意保険会社が対応を変えることは少ないように感じます。そのため,被害者側としては,他に選択しうる手段がないか,柔軟に検討する必要があります。しかし,突然,事故にあった被害者にとって,そのような手段について十分な知識はないのが通常です。保険制度は非常に複雑であり,専門的な知識を要する分野ですから,仮に一定の知識があっても,事故にあって動揺している被害者が適切な選択肢を選択できるとは限りません。

 本件もまさにそのような状況に置かれた事案でした。自賠責保険に対する仮渡金の請求,本請求,訴訟提起という流れで進めましたが,これ以外にも,社会保険の活用,仮払い仮処分等の裁判手続の利用が考えられます。多様な選択肢の中から,専門的な判断に基づき,適切な選択をすることが二次被害,三次被害の発生を防止し,真の被害者救済につながるものであると考えられます。

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