治療費の打ち切りを防ぎ,過失割合についても無過失であるとの主張が認められた事案
概要
被害者の属性 | 40代 男性 会社員 |
事故の分類 | 自動車で直進していたところ,右方から車線変更してきた自動車と衝突 |
負傷部位 | 首 |
傷病名 | 頚椎捻挫 |
依頼のきっかけ
事故後,4カ月が経過した時点で,症状が残存して治療を継続している状況であるにもかかわらず,保険会社から治療費の打ち切りの打診があり,十分な治療を受けたいという思いで,ラグーンへ来所されました。
また,事故態様は相手方車両が突然車線変更をしてきたという内容でしたが,依頼者にとっては衝突するまで相手方車両の車線変更を認識できない状況であったにもかかわらず,保険会社から依頼者の過失を主張されたため,今後の賠償について不安に感じたことも来所された理由の一つでした。
交渉の経緯
受任後,速やかに保険会社へ連絡をとり,治療を継続したい意向を伝えました。依頼者は,症状が残存しているものの,少しずつ改善をしている状況であったため,症状固定もしくは治癒と判断することに正当性はないと考えられ,その旨を保険会社の担当者にも説明をしました。
その結果,保険会社は,治療費を直ちに打ち切るのではなく,もう少し様子をみて,その間,一括対応(任意保険会社が病院に対して直接治療費の支払いをすること)を継続するということで了解をしてもらうことができました。
依頼者は十分に治療を受けることができたことから,治療は中止となり,示談交渉へ移行することになりました。
示談交渉においては,保険会社から,過失相殺として,別冊判例タイムズ38(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準)に基づき,3割の過失相殺をすべきであるとの主張がなされました。
しかし,依頼者から,事故態様について詳細にヒアリングしたところ,本件事故は単純な車線変更時の事故というものではなく,依頼者にとって,全く予見可能性も回避可能性もない,突発的な事故であるとのことでした。
そのため,示談交渉においては,当方に過失はないことを主な主張として,示談交渉をしました。
その結果,最終的には,依頼者の過失は存在しない,つまり相手方100:依頼者0という内容で,示談をすることができました。
弁護士の目
被害者が治療中であるにもかかわらず,保険会社から,治療費の打ち切りについて連絡が入ることは多々あります。一般的にはこのくらいの期間通院をすれば治るだろうという理由で打ち切りの連絡をしてきます。
治療費の支払は,一度打ち切りの処理をされてしまうと,交渉により一括対応(任意保険会社が病院に対して直接治療費の支払いをすること)を再開させることは極めて難しくなります。
そのため,治療中は,治療費の打ち切りに正当性がなければ,証拠や根拠を示して,いかに一括対応を継続してもらうかということが重要なポイントになります。
しかし,ほとんどのケースでは,被害者の方に,時間的,精神的な余裕がなく,専門的な知識もないため,治療費の打ち切りに対抗する手段がないというのが実情です。
このような場合,早期に,弁護士へ相談することが重要になってきます。早期の弁護士への相談が望ましいことは,過失割合についても同様です。
保険会社は,明らかに被害者にとって予見できず,避けることもできない事故であっても,上記の別冊判例タイムズ38(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準)という書籍に記載の事故態様に当てはめて,被害者側の過失割合を主張してきます。
過失割合については,当方に過失が認定された場合には賠償額が減額されることは当然のこととして,更に相手方に対する賠償の問題も発生するため,示談交渉にあたり重要な要素となります。
そのため,過失割合が問題となりそうな事案では,事故態様の詳細なヒアリングを前提に,専門的な観点から,過失割合を慎重に検討することが重要となります。そのことを再認識させられた事案でした。
- 過失割合が控訴審で有利に逆転した事案
- 加害者無保険でも人身傷害保険によって裁判基準満額の回収をした事案
- 令和3年12月28日(火)~令和4年1月4日(火)年末年始休業に関するお知らせ
- 山口県で交通事故の多い交差点ランキング
- 事故後の難聴を伴う耳鳴について12級相当の認定がなされた事案
- 異議申立によりCRPSで7級の認定を受けた後,裁判で解決した事案
- 【後遺障害12級13号】後遺障害逸失利益について就労が可能とされる67歳までの22年間の逸失利益を獲得した事例②
- 裁判でアルバイトの休業損害が認められ和解となった事例
- 早期治療費打ち切り後,被害者請求で支払った治療費を回収した事例
- 男性の家事従事者としての休業損害を請求し,その後示談した事例