骨盤骨折後の入院付添費,リフォーム工事費が裁判で認定された事案
被害者の属性 | 70代 女性 主婦 |
事故の分類 | 横断歩道を歩行中に右折車両と衝突 |
傷病名 | 骨盤骨折,眼窩骨骨折等 |
後遺障害等級 | 併合11級 |
依頼のきっかけ
事故から約1ヶ月経過した時点で,依頼者は入院加療中でした。依頼者とご家族は,付添介助をしていたご家族の交通費等の損害やリフォーム工事費等について,治療段階で保険会社が誠実に対応してくれるか不安に感じていました。知識や交渉力の差で,不利なことにならないように早期の段階で弁護士へ依頼することを決断しました。
後遺障害等級認定までのサポート
重傷を負っていたため,依頼直後から将来的な訴訟も視野に入れ,今後の対応について依頼者とご家族含めて打ち合わせをしました。ご家族には,付添介助をした方,日にち,介助の内容,移動手段と交通費等について,詳細に日記に残していただくようにお願いしました。
退院前,ある程度自宅へ戻る時期が決まってからは,自宅のリフォーム工事の内容について工事業者と打ち合わせをして,工事費の支払について保険会社との交渉を対応しました。
保険会社に対して必要な資料を開示し,示談前の早期の工事費支払を要請しました。保険会社の回答までに1ヶ月程度の時間を要しましたが,結論としては工事費について示談前の先払いに対応してもらうことができました。
通院を継続し症状固定となった段階で,ラグーンが代理人として後遺障害の申請をしたところ,後遺障害等級併合11級(外貌醜状12級等)の認定がなされました。
後遺障害の認定等級について,異議申立をすることも検討しましたが,主治医にも相談のうえ,異議申立は行わず交渉に進むことにしました。
交渉・裁判の経緯
当方からは,入院時のご家族の付添介助について入院付添費として賠償を求めました。しかし,保険会社は結果として一番重い後遺障害の内容が外貌醜状にすぎないこと等を理由に,支払を明確に拒絶したため,交渉は決裂し,訴訟提起となりました。
訴訟提起をした後も,加害者側は入院時の診断書等の記載(「ADL(※日常生活動作のこと)は概ね良好」等と記載)をもとに介助の必要性はなかったと主張して,入院付添費に支払を拒絶しました。
そこで,当方からは,カルテを仔細に検討し,ご家族による介助の具体的な内容を抜粋(「移動するときに家族に手伝ってもらった」等の記載)するとともに,打ち合わせ段階でご家族に依頼していた日記をもとに付添介助の内容を詳細に記した陳述書を証拠として提出しました。
その結果,裁判所から,入院付添費を損害として認定する内容の和解案が示され,最終的には,依頼者やご家族が非常に重視していた点について損害として認められたことから納得のうえ和解に至りました。
弁護士の目
被害者の方が入院している間に,ご家族の方が付添をして介助した場合,入院付添費として日額6500円程度を目安に損害として認定される可能性があります。
しかし,その要件は抽象的で,医師の指示がある場合,または受傷の程度,被害者の年齢等により必要がある場合に認められるとされています。専門家でなければ,そもそもどのようなケースが「必要がある場合」に該当するのか判断が難しい要件です。
また今回のケースがそうであったように,付添の必要がある場合に該当するか否かについて微妙な事案では,被害者側と保険会社側で意見が食い違うことも多くあります。そのようなケースでは,いかにして付添の必要性を立証するか(裁判所に認定してもらうか)が重要な課題になります。立証のためには,早い段階から証拠を残しておくことも意識しておかなければなりません。
今回のケースでは,付添の必要性を否定されかねない証拠が相手方から提出されましたが,事故直後の早い段階から意識的にご家族が付添の具体的な内容等について証拠化(日記等に残す)していたことから,相手方の主張に対する反論も可能となり,最終的には裁判所にも当方の主張を認めてもらうことができました。
早期のご相談と助言が重要であると再認識した事案でした。
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