裁判で2800万円の死亡慰謝料が認定された事案

被害者の属性 4歳 女児 
事故の分類 交差点で正面衝突(同乗者)
傷病名 頭蓋骨骨折等,死亡

依頼のきっかけ

 休みの日に家族で遊びに出掛けた帰りに,信号無視の車を避けるために急ハンドルを切った対向車と,依頼者家族の車が正面衝突し,同乗していた子供が不幸にも亡くなってしまいました。

 ご両親はショックから保険会社と交渉できる状況にはなかったため,インターネットで交通事故分野に注力している事務所を探し,ラグーンへご相談に来られました。

交渉の経緯

 ラグーンではこの度の事故で発生した損害について,赤い本(交通事故の賠償実務が豊富に掲載された書籍)や近時の裁判例等を精査し,せめて賠償面で最大限の補償がなされるように十分に検討し,相手方保険会社に賠償金を求めました。

 しかし,保険会社の回答は,子供が亡くなったことに関する慰謝料については今回と同様のケースで2200万円程度が相場との内容でした。また,逸失利益(事故で失った将来の収入)の算定についても考えが異なり,裁判外での合意は難しいと判断される状況でした。

 訴訟提起をしたところ,相手方は裁判前の交渉段階と同様に慰謝料の金額を主に争いましたが,逸失利益については特に争わない姿勢でした。

 主な争点は慰謝料の金額でしたので,ラグーンでは近時の裁判例の動向として亡くなったことによる慰謝料が以前に比べて増額されている傾向にあること,特に年若くして亡くなった方々の精神的苦痛は計り知れないものであることといった事情を中心に主張しました。

 その結果,裁判所から提示された和解案(裁判所から判決前に提示される賠償案)では亡くなったことに関する慰謝料として2800万円が相当であるとの判断が示されました。

 最終的には,双方とも和解案に納得して和解となりました。

弁護士の目

 交通事故で人が亡くなった場合の慰謝料は,亡くなられた方の属性によってある程度基準とされる金額があります。

例えば,弁護士が損害賠償の交渉をするうえで参考にする代表的な書籍である「赤い本」(平成30年版)によれば以下のように記載されています。

一家の支柱  2800万円

  母親,配偶者 2500万円

  その他    2000万円~2500万円

  (※「その他」とは独身の男女,子供,幼児等をいう。)

この記述だけを前提にすれば,今回のケースでは「その他」になるので,2000万円~2500万円が相場ということになります。保険会社の言い分はまさにそのような内容でした。赤い本の記述を一瞥しただけで(もしくは過去の前例を軽信して),結論を出そうとすれば,保険会社の言い分どおりの金額で合意をしてしまうリスクがあります。

しかし,「赤い本」をしっかりと確認すれば,実際には,「赤い本」では随時,慰謝料基準が改定されており(例えば,平成27年ころまでは「その他」の場合の慰謝料として2000万円~2200万円とされており,平成28年ころから上記の基準に変更されました),その際に近時の裁判例は増額化の傾向にある事実が指摘されていることが分かります。そして,このような傾向を踏まえれば,直近の裁判例はさらに増額化している可能性があることを推測できます。ラグーンで実際に直近の裁判例を調査すると,まさにその事実が確認されました。そこで,近時の裁判例の傾向を証拠として示し,最終的には2800万円という賠償金額の認定を受けて無事解決に至ることができました。

相場があると便利ですし見通しが立てやすくなることは否定できませんが,中途半端に対応したり軽信したりすれば,誤った相場を基準として用いてしまう危険性があります。常に批判的思考を持ちながら,文献を丁寧に読み込むことが重要であり,同時にそれが代理人として求められている使命であると思います。

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